♠19 成年後見制度の見直し(法務省)

♠となりの仕事

法務省では、成年後見制度の見直しに向けて、民法改正の準備を進めています。

1 成年後見制度とは

「成年後見制度」は、例えば、認知症や知的障害などの理由で、判断能力が十分でない人の、財産管理や契約をサポートする、という制度です。

「法制審議会」(法務大臣の諮問機関)の部会が、今年(2026年(令和8年))1月27日に、この成年後見制度の見直しに係る、要綱案を公表しました。

法務省としては、今後、国会に民法改正案などを提出する方針です。

そもそも、この「成年後見制度」ですが、1999年(平成11年)の民法改正で、従来の禁治産制度に代わって制定され、翌2000年に施行されたものです。

以前から「禁治産・準禁治産制度」は、差別的であるといった批判を受けていて、見直しが求められていました。

ただ、制度導入の直接の契機となったのは、何と言っても介護保険制度の発足です。

介護保険制度と成年後見制度は、しばしば「車の両輪」であると言われます。
介護保険法も、2000年4月1日に、成年後見制度と、同時に施行されました。

介護保険制度は、福祉サービスについて、それまでの「措置制度」、即ち行政処分としての組み立てから、受益者の意思決定を尊重する「契約制度」へと、大転換を図ろうとするものでした。

しかし、例えば、認知症の高齢者が契約当事者として、サービス提供事業者と契約を結ぶという局面を考えれば分かる通り、そこで生じる法律行為を支援するための仕組みが、どうしても必要になってくる制度でもありました。

先行していた、ドイツやイギリスの法律を参考に、日本でも「成年後見制度」が、大急ぎで整えられることになりました。

そのような経緯でスタートした現行制度ですが「一度契約してしまうと事実上、やめることができない」、或いは「権利を制約する範囲が広すぎるのではないか」といった批判が続いていました。

今回取りまとめられた要綱案は、成年後見制度の課題を解決し、より利用しやすい制度に変えようというものです。

2 成年後見制度の見直しのポイント

大きな見直しが検討されているのは、成年後見制度のうち、「法定後見制度」の方です。
(もう一つの類型として「任意後見制度」があります。)

「法定後見」は、本人の判断能力が低下した後に、家族などの申し立てを受けて、家庭裁判所がサポート役を選ぶという制度です。
(任意後見は、本人が、判断能力のあるうちに、将来の後見人を決めておこうというもの。)

この「法定後見」には、現在、本人の判断能力に応じて「後見人」「保佐人」「補助人」の3種類のサポート役の類型が、制度上、用意されています。

このうち最も権限の強い「後見人」には、財産管理や契約などの法律行為について、包括的な「代理権」が付与されることになります。
(「食料品の購入などの日常の行為」以外の、「取消権」も与えられます。)

また、当事者側の判断能力が回復しない限り、利用をやめられないので、例えば、認知症の高齢者などの場合には、事実上、終身契約のような形になってしまいます。実際に、現在は、そのような運用が続いています。

新たな制度は、当事者のニーズを超えて、権利が過剰に制約されることがないようにしよう、という発想で組み立てられています。

要綱案では、3種類の類型のうち、権限の大きい「後見人」と「保佐人」を廃止して、「補助人」に一本化しようとしています。必要な支援に限定する、いわば「オーダーメイド方式」が目指されています。

ただし、類型を「補助人」のみとした上で、判断能力を常に欠いていて、家庭裁判所が必要だと認めるような場合には、幅広い取り消し権を与える「特定補助」を選択できるという制度設計にも、なっています。

また、要綱案では家庭裁判所の判断により、「法定後見」を途中で終了できる規定を新設する、としています。

なお、もう一つの類型の「任意後見」の方も、一定の見直しが検討されています。
法定後見制度(補助人)との併用を認めるなど、柔軟な利用を可能にしようというものです。

法改正に向けた、今後の、議論の動向が注目されるところです。