♦2 丸亀城(香川県丸亀市)

♦となりの建築

香川県の西部、丸亀市にある、丸亀城。
日本一高い石垣のお城です。

標高66mの亀山を利用した、いわゆる平山城(ひらやまじろ)。
美しい石垣や、歴史的な建物が現存しています。市街も一望できます。

その恵まれた条件を活かして、丸亀城内の建物に宿泊できる「城泊(しろはく)」という取組が2024年(令和6年)7月から、スタートしています。

1 石垣の名城

「丸亀城」が造られたのは、1597年。
讃岐国の領主であった生駒親正(いこま ちかまさ)と、その子どもの生駒一正(いこま かずまさ)によって築城されました。

1615年には、幕府による「一国一城令」が出され、一旦廃城となります。
しかし、讃岐国が二つに分けられた後に、西讃岐国の領主となった、山﨑家治(やまざき いえはる)により再築されました。

石垣が築かれたのは、山﨑氏の時代とされています。
様々な積み方によって築かれた石垣が、今も多く残されています。

現存している天守は、1660年に完成したもの。
1943年に国の重要文化財に指定されました。

いわゆる天守閣(てんしゅかく)とは、城郭の本丸に建つ大きな櫓(やぐら)のことで、必要な時には、城主の指揮所ともなる重要な場所です。

現在、日本に残っている木造天守は12城。
そのうちの一つである「丸亀城」は、 日本一小さな天守を持つお城です。

丸亀城は「石垣の名城」と呼ばれています。

江戸時代初期の、石垣を築く技術が最高水準に達したときに作られたものです。
その石垣は、高く美しい曲線が特長となっています。

2 時代を超える旅「城泊」

2024年からスタートした城泊。料金は1泊2日、2人で税込み126万5000円で始りました。

丸亀市は、丸亀城をシンボルとしつつも、お城だけでなく、駅、港と歩いて楽しいウォーカブルなまちづくりを目指しています。「城泊」には、知名度向上などの効果を期待しています。

実際に、宿泊場所となるのは、城内の「延寿閣別館」という建物。

屋久杉の一枚板が使われた天井など、気品のある数寄屋風の建築物です。
壁やふすまなど、建てられた当時のものをなるべく残す形で、丸亀市が改装しました。

運営を行っているのは、全国各地の文化財や、城、名勝などの歴史的建造物を活用し、ホテル・レストラン・結婚式場を展開している、バリューマネジメント株式会社。

全国で急増している空き家や、空きビルの問題、或いは、歴史的建造物の維持や、保全といった課題。それらに向き合って、地域資源を磨き上げて再生し、持続可能な観光まちづくりを実現しようというビジネスを展開しています。

それにしても「城泊」は、富裕層をターゲットにした、桁違いに高額なプランとなっています。

没入感、いわゆる「イマーシブ体験」といったことが重要なキーワードになっています。
お殿様の贅沢体験をしてもらうプランです。

保存会の方々が打ち鳴らす和太鼓による歓迎に始まり、和菓子作りや竹うちわ作りなど、職人と直接対話し、指導してもらうといった、人件費のかかる数々の贅沢な趣向が用意されています。

何と「延寿閣別館」で夕食をとった後、天守を貸し切ってナイトラウンジにし、おつまみと共に、お酒を飲める「晩酌」プランも用意されています。

海外富裕層の人達に、日本のお城のお殿様体験をしてもらって、地域が持続できるように、沢山お金を落としてもらう、という循環は良いことだと思います。

折角なら、さらに「没入体験」のバリエーションを増やせないものかと思います。

できれば我々、日本の一般の人達にも手が届くような、もう少し廉価なプランもあってもよいのではないかと思います。

「お殿様体験」は、何も「贅沢体験」だけに限らないと思います。

歴史好きにとってみれば、例えば、判断を迫られた時の、お殿様の気持ちを追体験する、というようなことなども、魅力になると思います。

映像を使えば(人件費を抑えて)、そういった演出も、実現可能です。

例えば、幕府が理不尽な要求をしてきた場合に、お殿様としては、自分の意地を通して逆らうか、或いは我慢して従うべきか、迷うことになります。

家臣団の間で、意見が分かれる様子を、ドラマ風に映像で作っておいて、宿泊したときに、それを鑑賞するという趣向。
A案かB案か、最後に決断するのは、宿泊した人です。

史実通りの判断をした場合の、その後の歴史的な動きと、逆に、異なる判断をして、その後、どうなったかを(想定で)制作したパターンと、二つの映像についても、予め作成。

選択に対応した方の映像だけを、例えば、翌朝、朝食を食べながら、鑑賞する。
あなたの判断の結果、家臣や領民は、その後、こんなふうになりましたよ、と。

そんな想像力をかきたてるようなプランなら、多少高額でも、宿泊してみたいと思う、国内の歴史好き、お城好きは、結構、多いのではないかと思います。