多くの自治体が財政難にあえぐなか、公園の遊具などの更新費用を寄付で賄おうとする取組が各地で試みられています。
市民に、身近なものとして感じてもらうことなどを目的に、埼玉県上尾市では令和7年4月から、公園遊具等への寄付を受け付ける事業を開始しました。
1 寄付事業の経緯
かつてのバブル期に、全国で多数設置された公共の遊具が、近年、相次いで更新時期を迎えています。メンテナンスの財源として、寄付に、期待が寄せられています。
2014年には名古屋市で、個人や団体からの寄付をもとに小型の遊具などを設置する取組が行われました。また、2017年には、千葉市でも企業からの寄付を財源として、アスレチック遊具などの建設が行われています。
報道をたどっていくと、個人の方から、多額の寄付を受けたことを契機として、結論として、子供達のために大きな遊具を設置することで落ち着いた、という流れになっているようです。
寄付の使い途として、公園整備の財源にした、という展開自体は、古くからあったものです。
しかし、現在、少し状況が変わってきています。
自治体の財政難という慢性的な問題に加えて、少子化、人口減少という課題も深刻です。
団地の公園や、空き地で、平日の午後などに、遊んでいる子供達の姿を見かけることも、近年、急激に減ってきたように感じます。
身近な公園の、今後の遊具等のニーズは、そもそもどの程度なのか。
財政難の中、どれだけそのメンテナンスに財源を振り向けるべきなのか。難しい問題です。
加えて、この数十年、遊具での事故に対し、かなり過敏に反応してきた、反応せざるを得なかった、という自治体側の事情もあります。
遊具での事故が発生するたびに、国から全国への自治体へ直ぐに注意喚起のお知らせが流れます。
予算と見比べて、安全を優先し、遊具の撤去や使用停止を選択せざるを得なかった自治体の現場も多かったと思います。
そんな少し淋しい状況の中、次のような視点で、取組が始っています。
2 寄付事業の展開
江戸川区では、「公園施設寄附受入事業」として、公園施設や樹木へ、寄付した人の「名前」と「思い」や「記念」などを記入したプレートを取り付ける、という取組を行っています。
この事業の「受入概要」の中で、15センチ×5.5センチのプレートへ記載するコメントの例示として、こんな文章が紹介されています。
「おかげさまで夫婦共々還暦を迎えることが出来ました。これからも健康でありますように。」
江戸川 太郎・花子
とても面白い事業だと思います。
色々なバリエーションが思い浮かんできます。
かってに、こんなパターンを考えてみました。
パターン①
見晴らしの良い、高台に設置するベンチへ寄付をしたいと考えている、若い二人。
結婚を記念して。プレートのコメントはこんな感じ。
「銀婚式の頃、このベンチから、また二人で夕日を眺めようね。」
A男からB子へ
ベンチへの寄付だと、20万円位になるようですが、十分その価値があるのではないでしょうか。
パターン②
何人か、孫が出来たおじいちゃん。立体的な遊具に、こんなプレートを付けたいと考えています。
「まごたちへ。なかよくあそべ。このひみつきちは、おじいちゃんがつくったんだぞ。」
たけしより
お孫さんと公園に来て、プレートを読ませて「なんでじいちゃんの名前があるの!」と驚かせて、得意になっている姿が目に浮かぶようです。
パターン③
公園の中心にある、高いところまで登れる遊具へのプレート。
「のびちゃんへ。いつでもここから見守っています。」
おばあちゃんより
冒頭で紹介した、上尾市で新たにスタートする事業でも、記念プレートを取り付けることができるそうです。
面白いプレートのコメントが、SNSで拡散されたりすると、事業のヒットは間違いなし、となるかもしれません。
