ゆるキャラの代表格、くまモン。
今度は、初のエッセイ集を発売したそうです。
この話題とともに、ゆるキャラの歴史についてご紹介します。
1 くまモンのエッセイ集
くまモンは、熊本県が2010年(平成22年)から、キャンペーンなどで展開している熊本県のPRマスコットキャラクターです。ゆるキャラグランプリ2011の王者にもなっています。
2025年(令和7年)3月にデビュー15周年を迎え、初のエッセー集「くまモンのボクのきもち」を刊行したそうです。
くまモンは九州新幹線全線開通のPRキャラクターとして、開通の1年前、2010年3月に誕生。
当時の蒲島(かばしま)知事からの命を受け、大阪で活動を開始しましたが、その当時は、まだ認知度もほぼゼロの状態で、苦労もあったようです。
エッセーでは、その後、2016年(平成28年)の熊本地震の後に、保育園を訪問した時の思い出や、県営業部長兼しあわせ部長として、海外で熊本のPRのため、大活躍している様子などがつづられています。
2 ゆるキャラの歴史
そもそも元祖、ゆるキャラは、誰なのか。気になるところです。
「ご当地キャラクター」という呼び方も使われますが、「ゆるキャラ」という呼称の方については、その名付け親が、はっきりしています。
「ゆるキャラ」は、イラストレーターの、みうらじゅんさんが使い始めたものだと言われています。
2009年(平成21年)当時の取材に対して、みうらじゅんさんは、ゆるキャラの条件として、以下の3つ(ゆるキャラ三か条)を挙げています。
① 郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。
② 立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること。
③ 愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせていること。
「ゆるキャラ」という呼称が使われ始める、その少し前に、「たれぱんだ」というキャラクターが登場しています。
「たれぱんだ」は、1998年(平成10年)にデビューし、文房具など様々な形で使われて、人気者になりました。
この「たれぱんだ」が、ゆるキャラの元祖ではないか、と指摘する声もあるようです。
確かに、「時速2.75m/h。気がつくとそばにいます」といった設定などを見ると、力が抜けていて、いかにも「ゆるい」キャラクターです。現在のゆるキャラに通じるものがあります。
しかし「たれぱんだ」には、地域性はありません。少なくとも「ご当地キャラクター」と言い換えることができないキャラクターです。
他にも、例えば現在、群馬県がブランド化に力を入れている「ぐんまちゃん」という、可愛いらしい、ゆるキャラがいます。
実は、現在の「ぐんまちゃん」は二代目で、初代は、1983年(昭和58年)に群馬県で開催された、第38回国民体育大会(あかぎ国体)の、マスコットキャラクターとして登場したもの。
国民体育大会のマスコットキャラクターとして、初めて名前が付けられたキャラクターだと言われています。
しかし、デザインのパターンが限られていて、商品展開しづらいといった課題もあったことから、現在は2代目ぐんまちゃんに、その役割を譲っています。
こう考えると、「ゆるキャラ」という呼び方が生まれる以前から、同様の役割を果たしていたキャラクター自体は、様々な形で多数、存在していたと考えられます。
2000年に入った頃、全国各地の自治体で活躍していた、奇妙な着ぐるみを使った地域PRキャラクター達を総称して、みうらじゅんさんが、「ゆるキャラ」と表現し、その後のキャラクター達に、社会的な位置づけを与えてくれた、というのがその流れ。
つまり、「ゆるキャラ」という言葉が生まれる前に遡って、その元祖を探そうとしても、過去のキャラクターが「ゆるい」か「ゆるくない」かは、感じる人次第となってくるので、結局、元祖「ゆるキャラ」は特定できない、というのが、その答えになってくるのだと思います。
3 ゆるキャラの行く末
「くまモン」というネーミング。
言わずもがなですが、「くまもと」と一字違い。
また、熊本弁で、どこどこの人、という場合、どこどこモンと表現する、ということにもかかっています。
さらには、「~モン」は、「ポケモン」などを連想させる、キャラクターにはお馴染みの表現。
短いながら、よく出来ています。
実は、決して、ゆるくは無い、相当に、計算された設定。
熊本県の公式ホームページを見ると、「くまモン」で統一されていて、とても洗練された印象を受けます。デザイン管理のルールなども整理されていて、行き届いています。
くまモンは、初めて欧州進出を果たした2013年(平成25年)以降、海外でも活躍を続けており、2024年度(令和6年度)も台湾や香港など、アジアを中心に多数の海外出張を行っています。
くまモンをパッケージなどに使用した商品の売り上げは、実に累計で約1.5兆円。
2023年(令和5年)の関連グッズの売上高は、過去最高となる1664億円だったそうです。
全てが、県の収入となるわけでは無いと思いますが、大変な経済効果です。
現在、全国の市町村など、「ゆるキャラ」を持つ、多くの自治体では、地域振興や、PRが目的だからと、そのグッズ販売や、デザイン活用などについて、いわば「ゆるく」管理していることも、或いは多いのではないか、と推察されます。
現在、「ゆるキャラ」は飽和状態、という指摘もあります。ブランド化といっても限界も感じるところだとは思います。
しかしながら、「エッセイ集」まで発売してしまうという、くまモンの、このあまりにも巨大な経済効果に鑑みると、改めて「ご当地キャラクター」の戦略的なマネタイズ(収益化)の必要性について、考えさせられたところです。