青森県、八戸市にある八戸市立図書館。
今に続く、日本で一番古い公営の図書館です。
現在の建物は、1984年(昭和59年)に建設されたもの。
最高裁判所を設計した建築家、岡田新一の作品です。
1 八戸市立図書館の歴史
八戸市立図書館の歴史は、1874年(明治7年)に開設された、八戸書籍縦覧所(はちのへしょせきじゅうらんじょ)に始まります。
八戸書籍縦覧所は、旧八戸藩士が中心となって、藩の蔵書などをもとに開設したものです。
その後、 八戸町立図書館、八戸市立図書館と変わり、何度か場所も移転しましたが、貴重な蔵書を受け継ぎ、今に続いています。
明治期から途切れず続いてきた公立図書館として、国内最古なのです。
2024年(令和6年)には150周年を迎え、記念誌も制作されました。
■裏手を囲む公園の木々
■公園側から望む館内
2 建築家岡田新一の仕事
岡田新一は1928年(昭和3年)茨城県、水戸市生まれ。
2014年(平成26年)に、86歳で亡くなりました。
1957年(昭和32年)に、東京大学大学院修士課程を修了した後、鹿島建設株式会社に入社。
その後、最高裁判所新庁舎の設計競技(設計コンペ)で、一番となり、注目を集めました。
この成功を契機に独立し、岡田新一設計事務所を設立。
その後全国で、数多くの都市計画や、公共建築を手がけました。
最高裁判所は、花崗岩(かこうがん)の直線的な外壁が印象的で、とても重厚な建築物です。
テレビのニュースや刑事ドラマなどでもよく見かける、通称「桜田門」、警視庁本部庁舎をてがけたのも岡田新一設計事務所です。

■警視庁本部庁舎
八戸市立図書館は、1984年(昭和59年)に完成しました。
鉄筋コンクリート3階建てで、上空から見れば八芒星(はちぼうせい)に見えるデザインとなっています。
各階が、正方形の箱を45度ずらして積み上げたような、幾何学的な形となっています。
もしかしたら、デザイン優先で使いにくい内部となっているのではないか、と多少勘ぐって、中に入ってみると、自然な親しみやすい空間が広がっていました。
現在も、日々、多くの利用者で賑わっています。
■正面玄関側
■右側面から正面玄関へ向かう通路
3 開館150周年
令和6年度、八戸市立図書館は、150周年をむかえました。
様々な記念事業なども行われ、その最後の取り組みとして「八戸市立図書館150周年記念誌」が刊行されました。
今から50年前、1974年(昭和49年)年に、「八戸市立図書館百年史」が刊行されていました。
このため、今回の150年記念誌は、この「百年史」の続きとしてまとめることが出来たそうです。
「昭和49年」という響きも、既に時代がかっています。
そこからの50年、途切れることもなく、よく続いてきたと思います。
八戸市立図書館は、現在も、日々、多くの人々に利用されています。
近年、新設される全国各地の公共施設において、図書館は重要なポイントになっています。
小さな町なのに、図書館だけは賑わっている、という光景もよく見かけます。
一方で、インターネット環境などの普及により、本屋さんへ足を運ばなくても、ネット注文で、欲しい本を、自宅へ届けてもらえるようになりました。
全国的に、本屋さんは苦戦しています。
そもそも、デジタル化が進み、紙媒体からの置き換えも驚くほどのスピードで進んでいます。
今のところ、図書館への住民ニーズ自体は、衰える気配がないように見えます。
八戸市立図書館の、これからの50年。
200年記念誌を作ることになるかもしれない、その時代。
私達と「本」との関係性、また図書館の存在は、どのようなものになっているのでしょうか。
デジタル化は、きっと益々進むでしょう。
しかし、リアルに「印刷物」を手に取りたいという需要は、無くならないのではないか。
様々な想像が、膨らむところです。
■落ち着いた内部空間
■二階へ続く幾何学的な空間