♦4 千葉県立中央図書館(千葉県千葉市)

♦となりの建築

前川國男建築事務所で学んだ、戦後を代表する建築家のひとり、大髙正人(おおたか まさと)。
大髙正人が設計し、1968年(昭和43年)に竣工した、千葉県立中央図書館をご紹介します。

1 県立3館の調整機能を持つセンター館

■公道側の図書館側面

■公道側から見上げる図書館

 

千葉県立中央図書館 は、千葉市中央区にある県立の公共図書館です。

この中央図書館と、千葉県松戸市にある西部図書館、同じく千葉県旭市にある東部図書館の、3館を総称して「千葉県立図書館」という名称が使われています。

中央図書館は、この3館の調整機能を持つ、センター館という位置付け。

3館で役割分担(例えば西部図書館が自然科学等、東部図書館が文学等を充実)しながら運営してきましたが、2029年度(令和11年度)に、千葉市内に新たに建設される新県立図書館に移設、統合されることが決まっています。

中央図書館は、日本を代表する近代建築の一つとして「DOCOMOMO JAPAN選定の日本におけるモダン・ムーブメントの建築」にも選ばれており、高い評価を受けている建築物です。
(「ドコモモ」は近代建築の記録と保存を目的とする国際的な学術組織。)

県立図書館としての役割が終わることは決まっていますが、その保存・活用を望む声もあがっています。今後、どのような形になっていくのか、注目されるところです。

■正面入り口右側上部

 

■ノスタルジックな曲線の階段

■3階から望む中庭

2 戦後日本の建築思想「メタボリズム」

中央図書館を設計した、大高 正人(1923年~2010年)は、戦後のメタボリズム運動の主要人物としても活躍した建築家です。
福島県三春町の出身。

メタボリズム運動は、1960年代の高度経済成長期に日本で生まれた建築運動

生物のように、建築や都市も変化し、成長していくべきだという理念に基づいたもの。

生物学における新陳代謝(メタボリズム)を建築に取り入れ、社会や環境の変化に合わせて有機的に成長する都市や建築が提案されました。

大髙正人は、黒川紀章らとともに、この運動の主要なメンバーでした。
2010年(平成22年)老衰のため死去。86歳でした。

■ツタのからまる中央公園のロゴ

■生い茂る「文化の森」の木々

3 安全性と歴史的価値

中央図書館の内部は、現在多くのスペースが仮設の壁で仕切られて、立ち入りできないようになっています。耐震性などに懸念があるようです。

公共施設としては、利用者の安全性を確保することは必須の前提です。

一方で、限られた予算の中で、老朽化した施設の維持修繕に、どこまで経費をかけ、根本的な対策をすべきなのか。管理者側としては、頭の痛いところ。

そもそも、厳しい人口減少下、利用者が減少していくトレンドも避けがたいところです。

この中央図書館の他にも、全国には、高度経済成長期に建設され、その後、老朽化し、更新時期を迎えている建築物、同時に、だからこそ歴史的な価値や魅力を持っている建築物が、急増しているのだろうと思います。

その行く末が憂慮されるところです。