北海道庁の出先機関である、胆振総合振興局(室蘭市、苫小牧市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、白老町、厚真町、洞爺湖町、安平町、むかわ町の4市7町を管轄)は、管内の縄文遺跡群への関心を高めようと、独自にコレクションカードを制作しました。
2025年7月から、希望者へ配布を行っています。
1 縄文遺跡群カード
新たに制作したカードは、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の遺跡や、出土品の特徴などをまとめたオリジナルカード「いぶりの縄文コレクションカード」。
全部で28種類あり、ホログラム仕様のレアカードなど三つのカテゴリーに分かれていて、苫小牧市美術博物館など、管内の7施設で配布しています。(無くなり次第終了)
北海道・北東北の縄文遺跡群は、北海道6遺跡、青森県8遺跡、岩手県1遺跡、秋田県2遺跡の合計17遺跡と、他に2つの関連資産で構成されています。
このうち、胆振総合振興局管内にあるのは、伊達市にある、「北小金(きたこがね)貝塚」と、洞爺湖町にある、「入江・高砂(いりえ・たかさご)貝塚」の2遺跡。
いずれも、内浦湾に面した大規模な貝塚を伴う集落跡です。当時の暮らしの様子を垣間見ることができる、貴重な人骨も、たくさん見つかっています。
2 世界文化遺産
「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、2021年(令和3年)に、世界文化遺産に登録されました。
豊かな自然の恵みを受けながら、1万年以上にわたり採集・漁労・狩猟により定住生活をしていた縄文時代の人々の暮らしと精神文化を今に伝える、貴重な遺跡群となっています。
これらの遺跡が所在する北海道・北東北の地域は、山地、丘陵、平地、低地など変化に富んだ地形となっており、内湾や湖沼、あるいは河川なども見られるエリアです。
ブナ林を中心とする広葉樹の森林、暖流と寒流とが交差し豊かな漁場を形成する海、サケ・マスなどが遡上する川、といった恵まれた環境。
約15,000年前、当時の人々は、このような環境のもとで食料を安定的に確保し、土器を使用しながら、定住生活を始めたのです。
その後、1万年以上にわたって、環境の変化にも適応しながら、採集・漁労・狩猟を基盤とした生活を継続しました。
また、定住開始のごく初期から、複雑な精神文化を構築していたことも分かっています。
墓地を作り、祭祀・儀礼の場である捨て場や盛土、環状列石などを構築し、祖先崇拝や自然崇拝、或いは豊穣への祈念、といったことに基づく暮らしを、世代を越えて受け継いでいたと考えられています。
このような価値が認められて、世界遺産となったのです。
3 公共配布カード
近年、文化財や、土木構造物などに対する住民の理解を深めてもらおうと、公共機関が無償配布している、いわゆる「公共配布カード」が人気を集めています。
来訪者が増えることによる、地域への経済効果などが期待されているものです。
自治体をまたぐので、難しいのかもしれませんが、統一したデザインのカードを作れるようだと、面白いと思います。
例えば、5体の国宝の土偶を「スーパーレア」にしたコレクションカードが出回ったりするようだと、集めてみたくなる人は、案外、多いのかもしれません。