♠12 縄文遺跡カードを制作(北海道胆振総合振興局)

♠となりの仕事

北海道庁の出先機関である、胆振総合振興局(室蘭市、苫小牧市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、白老町、厚真町、洞爺湖町、安平町、むかわ町の4市7町を管轄)は、管内の縄文遺跡群への関心を高めようと、独自にコレクションカードを制作しました。

2025年7月から、希望者へ配布を行っています。

1 縄文遺跡群カード

新たに制作したカードは、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の遺跡や、出土品の特徴などをまとめたオリジナルカード「いぶりの縄文コレクションカード」。

全部で28種類あり、ホログラム仕様のレアカードなど三つのカテゴリーに分かれていて、苫小牧市美術博物館など、管内の7施設で配布しています。(無くなり次第終了)

北海道・北東北の縄文遺跡群は、北海道6遺跡、青森県8遺跡、岩手県1遺跡、秋田県2遺跡の合計17遺跡と、他に2つの関連資産で構成されています。

このうち、胆振総合振興局管内にあるのは、伊達市にある、「北小金(きたこがね)貝塚」と、洞爺湖町にある、「入江・高砂(いりえ・たかさご)貝塚」の2遺跡。

いずれも、内浦湾に面した大規模な貝塚を伴う集落跡です。当時の暮らしの様子を垣間見ることができる、貴重な人骨も、たくさん見つかっています。

2 世界文化遺産

「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、2021年(令和3年)に、世界文化遺産に登録されました。

豊かな自然の恵みを受けながら、1万年以上にわたり採集・漁労・狩猟により定住生活をしていた縄文時代の人々の暮らしと精神文化を今に伝える、貴重な遺跡群となっています。

これらの遺跡が所在する北海道・北東北の地域は、山地、丘陵、平地、低地など変化に富んだ地形となっており、内湾や湖沼、あるいは河川なども見られるエリアです。

ブナ林を中心とする広葉樹の森林、暖流と寒流とが交差し豊かな漁場を形成する海、サケ・マスなどが遡上する川、といった恵まれた環境。

約15,000年前、当時の人々は、このような環境のもとで食料を安定的に確保し、土器を使用しながら、定住生活を始めたのです。

その後、1万年以上にわたって、環境の変化にも適応しながら、採集・漁労・狩猟を基盤とした生活を継続しました。

また、定住開始のごく初期から、複雑な精神文化を構築していたことも分かっています。

墓地を作り、祭祀・儀礼の場である捨て場や盛土、環状列石などを構築し、祖先崇拝や自然崇拝、或いは豊穣への祈念、といったことに基づく暮らしを、世代を越えて受け継いでいたと考えられています。

このような価値が認められて、世界遺産となったのです。

3 公共配布カード

近年、文化財や、土木構造物などに対する住民の理解を深めてもらおうと、公共機関が無償配布している、いわゆる「公共配布カード」が人気を集めています。

来訪者が増えることによる、地域への経済効果などが期待されているものです。

この公共配布カードは、国土交通省などが考案し、2007年(平成19年)から配布を開始した「ダムカード」が始まりとされています。

ダムカードは、名刺サイズのカード表面をダムの全景写真とし、裏面に、ダムの形式や貯水池の容量、建設時の技術などの情報を記載したものです。

数量限定で、関係する施設に実際に訪れた人にだけ配布するというルール。
その希少性などから、愛好家などに人気となっています。既に800種類を超えているそうです。

同じインフラ系の、マンホールカードも人気です。
2016年(平成28年)に、ダムカードを参考にして、戦略的に作られたものです。
地域の歴史にまつわる文化資源やキャラクター、或いは特産物などのデザインを採用したマンホールの写真をメインとしたカードです。

公益社団法人日本下水道協会が、下水道広報の母体として立ち上げた「下水道広報プラットフォーム(GKP)」が企画し、運営しています。

2025年(令和7年)7月には、第26弾となるカードの配布を開始したそうです。
第1弾から数えて1,189種(750自治体・団体)、カードの累計発行枚数で1,650万枚に達するというから驚きです。

この他にも、現在、例えば「離島」や「工場夜景」など、様々なジャンルのカードが増えており、「いぶりの縄文コレクションカード」も、そのようなカードの一つです。

縄文時代のデザインは、各地の土器や土偶にみられるように、とてもユニークで魅力的です。
コレクションカードには、相性の良いジャンルの一つだと思います。

全国で、多くの土偶が見つかっていますが、国宝にまでなっているのは、現在、5体だけ。

即ち、①完全な形の土偶として国内最大の『縄文の女神』(山形県舟形町)、②内部が空洞の『中空土偶』(北海道函館市)、③祈るように手を合わせる『合掌土偶』(青森県八戸市)、④ふくよかな女性を表現した『縄文のビーナス』(長野県茅野市)、⑤逆三角形の仮面をつけた『仮面の女神』(同茅野市)。

自治体をまたぐので、難しいのかもしれませんが、統一したデザインのカードを作れるようだと、面白いと思います。

例えば、5体の国宝の土偶を「スーパーレア」にしたコレクションカードが出回ったりするようだと、集めてみたくなる人は、案外、多いのかもしれません。