♠16 学校らくらく連絡サービス(宮崎県都城市)

♠となりの仕事

宮崎県の南西部に位置する、都城市(みやこのじょうし)。
行政のデジタル化で、成果をあげています。

2022年(令和4年)から進めている「学校らくらく連絡サービス」の取組が、2025年の第4回「デジ田(デン)甲子園」で、準優勝となりました。

1 コスト0円の学校連絡システム

「デジ田(でん)甲子園」は、デジタル技術を活用した、地域活性化のアイデアを競う、政府が開催しているコンテストです。

2025年(令和7年)の第4回の大会に、都城市は「三方良しを実現!コスト0円の学校連絡イノベーション」と題した取組でエントリーしました。

その結果、「審査委員会 選考枠 地方公共団体部門」で準優勝を獲得しました。

学校や保護者、さらには教育委員会などをつないだ連絡アプリ「sigfy」を全市で⼀⻫に導⼊した、という取組です。

確かに、忙しい朝、保護者も、或いは電話を受ける担任の先生の側も、子供の欠席の連絡をやり取りするのは、とても負担です。

また、近年は、学校から父兄へ、緊急に連絡しなければならない場面も増えています。

或いはまた、決まって〆切間際の朝になって子供が出してくる、学校からのアンケートのプリント類。親もバタバタしますが、その後、紙から集計作業をする、学校の先生も大変です。

この連絡アプリは、これらの不都合を、画期的に効率化するものです。
まさに関係者の負担を「革命的」に軽減する、三方よしの取組。

⼩中学校だけでなく、公立幼稚園や保育園にも導⼊し、⼦育てのステージを問わず、長い期間、馴染んだツールを使えるようにした点も、評価されています。

さらに特筆すべき仕組みがあります。
企業広告を活用することで、なんと市の財政負担は「0円」なそうです。

自治体の財政当局目線から見ても、満点の取組だと思います。

他のセクションで働いている自治体職員から見ても、面白い効用があります。

様々な行政目的で、イベントなどを行うことがあります。
そのような場合、行事の性質によっては、集客にとても苦労したりします。

このアプリで周知することにより、数分で定員に達成したことも、実際にあったようです。
圧倒的な、情報伝達力です。

筆者も、子供が小さい頃そうでしたが、思えば、学校からのメール連絡などは(仕事中でも何とか)最優先で、確認していました。

事件や事故などのため、急に迎えに来て欲しい、ということも実際に多くなっているからです。
当該事業の周知効果の力は(企業広告も含め)、とても大きなものだと思います。

2 デジタル田園都市国家構想

そもそも「デジタル田園都市国家構想」は、2021年(令和3年)に、当時の岸田文雄内閣の下で始動したものです。

「デジタルによる地域活性化を進め、さらには地方から国全体へボトムアップの成長を実現する」ということを目的としていました。

①デジタル基盤を整備し、②デジタル人材の育成・確保を図り、③地方の課題を解決する為のデジタルを実装する。そしてそれは、誰一人取り残されない為の取組である、というのが謳い文句でした。

この取組の旗振り役となる、政府主催の「デジタル田園都市国家構想 実現会議」は、2021年(令和3年)に設置されたものです。

それまでの安倍・菅政権が進めてきた地方創生の取組を、いわば看板を掛け替えて(デジタルに力点を置いて)スタートしたものでした。

その後、2024年(令和6年)に首相に就任した石破茂総理は、この「デジタル田園都市国家構想 実現会議」を廃止し、「新しい地方経済・生活環境創生本部」に移行させました。

当時、石破総理は、就任記者会見で、地方創生に関する、初代の担当相を務めた経験を踏まえ「原点に返り、リニューアルする」と力説していました。

そして、現在。
昨年、2025年(令和7年)に誕生した、高市早苗政権は、早速、この「新しい地方経済・生活環境創生本部」を廃止して、「地域未来戦略本部」を設置しました。

地域の活性化へ向けて、産業集積の推進などを議論する場にする。地方に投資を呼び込む「産業クラスター」の形成を目指す、としています。

担当する黄川田地方創生相は、「従来からの取り組みは引き続き行う」とも話していますが、今後の動向が注目されるところです。

『菅政権(地方重視)→岸田政権(揺り戻し)→石破政権(地方重視)→高市政権(揺り戻し?)』というような流れだと思います。

都城市の取組は、コンテストの審査委員から「企業広告を活用した市負担0円モデルが先進的だ。費用面だけでなく時間面での効率化も素晴らしい。DXのあるべきベーシックな姿を体現している」と高く評価されています。

政府の会議体の名称変更に象徴されるように、地方行財政を取り巻く、政治的な力学の変化というものはつきまといますが、地方の抱える社会問題を克服していく上で、デジタル化による取組は、いまや欠かせない視点になっていることは、間違いないようです。