♠5 1笑顔1円換算で事業効果測定(広島県三原市)

♠となりの仕事

すっかり身近になった、顔認識技術。
センサーが捉えた映像から顔の位置を検出し、その部分にピントを合わせてくれる機能は、今や、デジカメやスマートフォンに当たり前のように搭載されています。

広島県三原市では、今年(2025年)2月、お祭りの会場に訪れた人の「笑顔」を人工知能(AI)で検知し、「1笑顔」を1円に換算して、お祭りの主催者に運営資金として寄付する、という実証実験を実施しました。

顔認証技術と、人工知能(AI)が組み合わさると、様々な可能性が広がってきます。
取組の様子を見ていきます。

1 「1笑顔1円」換算で寄付

2025年(令和6年)2月7日から9日までの3日間、三原市では、市の伝統のお祭りである「三原神明市」と、麺料理を集めたイベントの「みはら神麺市」の各会場に、カメラ用のAIアプリを搭載したタブレットとモニターを設置しました。

このカメラが、来場者の笑顔を捉えると、モニターに映った顔を「1笑顔」としてカウント。
同時にスポンサー企業の広告が、モニターに表示される仕組み。

お祭りの終了後、笑顔のカウント数に応じて、主催者が寄付金を受け取り、運営資金にあてるという事業となっています。
今回は、実証実験として、「1笑顔=1円」換算の寄付金は三原市が負担。

ゆくゆくは機器の設置費用と、寄付金をスポンサー企業が負担する形で持続できるような事業に育てたいという三原市の取組となっています。

2 実証実験の結果と今後の行方

三原市の発表によると、3日間の実証実験の結果、「三原神明市」会場では14,052笑顔、「みはら神麺市」会場では7,424笑顔、合計で21,476笑顔を集めることができた、とのことです。

つまりは、三原市が負担した寄付金は21,476円だった、ということです。

今後、参加してみようと思う、地元の小さな企業も増えそうな金額水準に落ち着いた、ということなのかもしれません。

一方で、もしかしたら、想定していた「笑顔」はもう少し多かったのかも。
お祭り会場といっても、みんながみんな、必ずしも常に笑顔でいるわけではないでしょうから。

或いは「1笑顔1円」換算を、「1笑顔10円」換算と見直すことなど、条件見直しのバリエーションは色々とありそうです。

例えば、参加者が笑顔になった瞬間に、目にする企業広告の良い効果が、うまく検証できたりすると、企業側も、より多い額の寄付金であっても負担しやすくなるのだと思います。

その他にも「笑顔認証」は、様々な研究が進んでいるようです。

例えば、社員の、出退勤などの打刻を行なう際に、笑顔を感知して写真撮影を行なう、というシステムの提案なども始まっています。

確かに、朝、出社して仕事を始める際に、たとえ作り笑いであったとしても、社員に笑顔を見せてもらう(そうしないと打刻できない)というルールを設定することは、明るい職場づくりへの一つの貢献になると思います。

ところで、近年、地方自治体が、いわゆる「長期計画」などを策定する際に、年度毎の目標値を定め、その進捗についても公表するよう、議会などから求められることが一般的になっています。

地方自治体は、非常に様々なタイプの事業を進めています。

それぞれの事業の進捗を測るための、適切な数値目標を設定することは、実は、案外難しい作業となっています。手頃な数値を見つけかねて苦労している職員の方々も、多いと思います。

例えば、あるイベントが上手くいったのかどうか、それをどのように測定したらよいか。
その指標の在り方は、考えてみると、難しいところです。

一般的には、来場者アンケートや、或いは端的に「来場者数」を指標としたりすること多いと思います。

そんな中、今後は、もしかしたら、AIの測定による、住民の「笑顔の数」が、事業効果を図る指標として、イベントに限らず、様々な局面で、採用される時代が来るかもしれないな、と想像したところです。