♦11 図書館等複合施設「まちやま」(新潟県三条市)

♦となりの建築

新潟県の中央部に位置する、三条市。
江戸時代から続く、金属加工などを中心とした、ものづくりのまちです。

2022年(令和4年)に完成した、図書館を核としつつ、鍛冶ミュージアムなどを併設する複合施設「まちやま」を紹介します。

1 ものづくりのまち三条

三条市は、お隣の燕市とともに、工業都市として発展してきました。
古くから、三条市は商人のまち、燕市は職人のまちと称されてきました。

しかし、三条市は中越地方、燕市は下越地方と分かれています。古くは、文化的な一つの境目でした。このため、両市は、ある種のライバル的な関係ともなっています。

例えば、上越新幹線の駅名は「燕三条駅」。
実は、駅舎は北側が燕市に、南側が三条市にまたがって建設されています。

しかし、駅長室が三条市の側にあることから、所在地は三条市となっています。一方、名称の方は「燕」が最初にきて「燕三条駅」。

また、すぐ北側に隣接した位置に、北陸自動車道のインターチェンジがあるのですが、こちらは完全に、燕市の中に建設されています。
しかし名称は「三条燕インターチェンジ」で「三条」の方が先。

インターチェンジの名称と、新幹線の駅名は(紆余曲折を経て)前後して決定されたそうです。
(調整にあたった、当時の関係者のご苦労が想像されます。)

■「まちやま」入り口

■木材とスチールを活かした内装

複合施設「まちやま」を設計したのは、隈研吾氏(1954年(昭和29年)生まれ)。
木材を活かした建築で知られる建築家です。

複合施設も、ルーバーと呼ばれる、木製の細長い板が沢山使われる意匠となっています。

ただし、三条市の、金属加工産業のまち、という背景を踏まえ、木材は、むしろスチールなどの、金属的な素材を、より強調する役割になっていると感じます。

施設の中で、天井を見上げると、大胆に木の板がすかしてあり、印象的です。

■3階まで続く図書館スペース

■3階天井の様子

本館1階から3階まで、中心になっているのは、図書館の機能です。

正面1階の左手には、「通りドマ」と名付けられた、屋根付きの大きな通路を挟んで、多目的に活用できるホールが建設されています。
(「科学教育センター機能」の一環として、サイエンスホールと名付けられています。)

本館1階は、図書館スペースのほか、「サイエンスラボ」と名付けられた理科学習用のスペース、それから「鍛冶ミュージアム」で構成されています。

「鍛冶ミュージアム」とは、訪れた人が地域の鍛冶産業について学び、触れることができる施設です。三条市でつくられた刃物や工具を、施設の利用カードで(図書館の本のように)借りることができる、ユニークな施設です。

■1階「鍛冶ミュージアム」

■雰囲気のある館内サイン

2 「えんがわ」と「まちやま」

「まちやま」は、旧三条小学校跡地に、建設されました。

三条市立三条小学校は、名前が示すとおり、三条市の中で、最も古い小学校でした。
1872年(明治5年)に創立され、2017年(平成29年)の3月に廃校になりました。

「まちやま」の裏の広場(南西側の隣接地境界付近)には、三条小学校の校歌が刻まれた記念碑が建立されています。

この小学校跡地には(「まちやま」が建設される前の2016年に)まず、木造の交流施設が建設されました。イベントなどにも活用できる交流拠点としてつくられたものです。
こちらは「ステージえんがわ」と名付けられました(設計は手塚建築研究所)。

「まちやま」は、その後、2022年(令和4年)に完成しました。
名称は、一般公募を経て決まったものですが、「えんがわ」とも語呂などが馴染むように、といった点なども考慮して選定されました。

「まちやま」本館1階には、カフェスペースがあり、「 ステージえんがわ」の方にはランチスペース(三条スパイス研究所)などもあります。

施設内はもちろんですが、天気が良ければ、屋外ひろば(「グランドひろば」や「ラボひろば」など)も、日々、多くの人で賑わっています。

■まちなか交流広場 ステージえんがわ

■「えんがわ」と「まちやま」の位置関係

全国的に、公共施設などでも人気の高い隈研吾作品ですが、現在、木製素材ゆえの、早い劣化や、メンテナンスの難しさといった問題も生じています。

旧三条小学校は、144年の長い歴史を刻みました。

「まちやま」も、経年劣化が一つの「風合い」となって、地域の生活に「里山」のようにとけ込み、長く愛される施設になると良いなと感じました。

■サイエンスホール側のサイン

■正面入り口へ向かうサイン

■中央部の「通りドマ」

■通りドマを抜け施設裏側から見た全景

■施設裏側の外観

■施設裏側のひろば(左手奥に三条小学校の記念碑)