♣9 戸籍の氏名にカタカタを付す新制度スタート

♠となりの仕事

2025年(令和7年)5月26日から、戸籍の氏名にカタカナで読み仮名(振り仮名)を記す新制度がスタートしました。戸籍法の改正によるものです。

本籍地の自治体から、住民に対して、順次、はがきで読み仮名が通知されることになっています。
自分の分が間違っていないか確認し、もし違っている場合には申し出ることが必要となります。

1 戸籍の読み仮名が確定するまで

それぞれの市町村では、住民基本台帳の情報を参考に読み仮名を振り、はがきを送付する作業を進めています。
6月から夏にかけて、はがきが、それぞれの家庭に届く見通しとなっています。
はがきとは別に、マイナンバーカードを使ったサイト「マイナポータル」でも、画面で確認できることになっています。

もし読み仮名に誤りがあれば、「氏」は戸籍の筆頭者、「名」の方は本人が、2026年(令和8年)5月25日までに届け出る必要があります。未成年の場合は親権者が代行することになります。
マイナポータルのほか、本籍地の自治体への書類の郵送や、居住地の窓口に届け出ることでも、手続が進むことになっています。

届け出をしないまま通知された読み仮名が戸籍に記載された場合には、1回に限って自治体への届け出で、変更できます。
ただし、2回目以降は、氏名の変更手続きと同様に、家庭裁判所での審判を経ることが必要となってきます。

また、手続きに手数料はかからず、届け出をしなくても罰金は科されません。
このため、法務省は、読み仮名の通知に便乗した詐欺への注意を呼び掛けています。
手数料や罰金名目で、金銭の支払いを要求するような詐欺を、警戒しているものです。

2 名前は誰のものか

これまでの、出生届に書く「よみかた」は、住民基本台帳の事務処理のために、便宜上登録されているだけのものでした。
国は行政手続きのデジタル化のために、法改正を行い、氏名に読み仮名を記すしくみを法律上の制度としたのです。

戸籍にフリガナが記載されることによって、本人確認がより確実、スムーズに行われることになります。幅広い行政サービスの向上が期待されています。

また、フリガナが公的に確定することで、金融機関などにおいてフリガナを使い分けて複数の口座を開設するといった不適切な行為なども防止できると言われています。

このような説明を聞くと、国が国民を管理しやすくするための制度化なの?、と勘ぐりたくもなってくるところ。

しかし、考えてみれば、もともと名前は、自分のもののようでいて、むしろ、社会との関係の中で、意味を持ってくるといった面が、強いのかもしれません。
極端な話し、もし無人島で、一人きりだったとしたら、名前は不要なのですから。

また、数年前、あまりにも一般的では無い、いわゆる「キラキラネーム」を、親に付けられた高校生が、今後の生活に支障をきたすとして、自分で改名を家庭裁判所に申し立て、認められたという話題が報じられたことがありました。

しっかりとした理由があれば、15歳以上なら、数千円の手数料で手続き可能なのです。

「キラキラネーム」が増えた反動で、大きくなって、自分で名前を変えたいという申し出を行うことが、或いは今後、増えていく可能性はあると思います。

一方で、名前の変更が安易に認められるようだと、社会の不安定さにもつながりかねないところ。ビジネスの局面を考えれば、様々な不便も想像されます。

結局、名前は誰のものなのか。
本人のものか、名付ける親のものか、或いは社会のものなのか。

これまで記入欄がなかった出生届に、今回の改正で、読み仮名の記載が求められることになりました。

改正法は読み仮名について「読み方として一般に認められているものでなければならない」と定め、キラキラネームに一定の制限が設けられることになりました。

この点は、窓口となる市区町村が審査することになります。
必要に応じて、届け出た親に対し、説明や、資料の提出を求めることにもなってきます。

名前は、本人のものでもあり、名付ける親のものでもあり、また社会のものでもあるのです。

一定の運用ルールが整い、同時に、様々な事例が蓄積されるまでは、当面、市町村の現場では、頭の痛い日々が続くことになるのだろうと思います。