2019年(令和元年)5月に成立し、公布された改正戸籍法。
既に、2024年(令和6年)3月1日から、順次施行となっています。
この改正によって、戸籍証明書等に関する手続きなどが、シンプルになると言われています。
さらに、2025年(令和7年)5月からは、戸籍に読み仮名を振る制度もスタートします。
自治体側の事務負担に加え、住民の混乱も想像されるところ。
その背景と、自治体の対応の様子を見ていきます。
1 戸籍法の一部を改正する法律の概要(令和元年5月成立、公布)
法務省の資料によれば、2019年(令和元年)の戸籍法の改正の概要は次のとおりです。
そもそも「戸籍」とは
- 戸籍とは「国民各人の身分関係を公証(※)する公正証書」のことです。 戸籍法(昭和22年法律第224号)は、その戸籍に関する制度(戸籍制度)を定める法律。 (※公証とは、特定の事実又は法律関係の存在を証明する行政行為)
- 昭和22年に、それまでの封建的な家制度を前提としたものから、個人の尊厳と両性の本質的平等に基づく制度へと、民法が改正されました。
- 平成6年の法改正により、コンピューターを使用する戸籍事務へ。
- 平成19年の法改正により、戸籍の公開制度の在り方が見直されました。
- 平成25年に戸籍副本データ管理システムを導入。法務省で戸籍の副本を管理する体制へ。
- 現在、全ての市区町村で戸籍事務はコンピュータシステム化が図られています。
これまでの課題と対応策
折角つくりあげた各市区町村のコンピュータ・システムが、ネットワーク化されていなかったことが、大きな課題となってきました。
そこで、既存の戸籍副本データ管理システムを活用・発展させて、新たなシステムを構築し、データの提供を可能とする、とされたところです。
2 戸籍法改正による変更点(2024年3月施行)
改正法による、主な変更点は次のとおりです。
- 本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになること(広域交付制度)
- 戸籍届出時における戸籍証明書等の添付の負担が軽減されること 例えば、新婚旅行先の市区町村の窓口に婚姻届を提出する場合など、提出先の市区町村の職員がシステムを介して本籍地の戸籍を確認し、戸籍証明書等の添付不要となるものです。
- 戸籍電子証明書の活用により戸籍証明書等の添付が省略できるようになること 例えば、パスポートの発給申請において、申請書と併せて戸籍電子証明書提供用識別符号(期限のあるパスワード)を提示し、オンラインで手続を完結させることが予定されています。
3 戸籍の「振り仮名」の法制化(2025年5月施行の改正法)
また、これからは、戸籍に振り仮名(読み仮名)を記載するルールとなります。
世の中がざわつきそうな局面が二つあると思います。
- 全国民の戸籍に降り仮名を付け直す、市町村側の作業は円滑に進むのか。 2024年11月に、法務省は、各自治体から通知された振り仮名が正しい場合、住民は市区町村への届け出をしなくれもよい、とする方針を示しました。 これは、当初は正誤にかかわらず届け出を求めることとしていたものを、自治体側から、事務負担の軽減を求める声があがり、見直された、という経緯です。
- 新しく生まれてくる子供につける振り仮名の判断基準が、住民の間で浸透するのか。 例えば、「高」の漢字で「ヒクシ」と読ませる振り仮名は、漢字の意味として反対となるため許容されない見込みとなっています。 このように、個別の例は示されています。しかし、当面、現場での実際の判断における混乱も想像されるところです。
行政のデジタル化が進むことで、住民の利便性も向上するとともに、自治体側の事務の効率化も図られることは間違いないと思います。
しかし、当面は、様々な問題も発生しそうなところ。
このサイトでも、改正戸籍法の運用について、しばらく注視していきたいと思います。