宮城県の北東部、太平洋に面する石巻市。
石ノ森萬画館を核とした、漫画によるまちづくりが進められています。
1 サイボーグ009のブロンズ像
JR石巻駅(及び駅前の市役所)から、旧北上川の中州に建設されている、石ノ森萬画館までの、およそ1㎞の区間は、石巻マンガロードと呼ばれています。
街の様々な場所に、石ノ森章太郎が生み出した、沢山の人気キャラクターの像(モニュメント)が設置されています。その数は、既に30体を超えていますが、現在も、増加中です。
(2025年11月現在、市のまちあるきMAPで紹介されているのは36体)
2020年(令和2年)3月に「かわまち交流センター」前に加わったのが、サイボーグ009(ゼロゼロナイン)のブロンズ像。数あるモニュメントの中でも、ひときわ存在感があります。
制作したのは、造形師の寒河江弘(さがえひろし)。
寒河江は、いわゆるフィギュア造形作家です。
大阪芸術大学で彫塑を専攻し、卒業後は、特撮映画の美術スタッフとして、戦隊シリーズやウルトラマン、ゴジラなどの作品にも参加しました。
大阪芸術大学短期大学部の教授も勤めましたが、このサイボーグ009像が設置される直前の、2019年(令和元年)10月に、病気のため、52歳の若さで亡くなっています。

■石巻の空に輝く島村ジョー
マンガロードには、サイボーグ009のような典型的なヒーローだけではなく、多種多様なタイプのキャラクターの像が設置されています。
現在、駅と萬画館を結ぶ、一本の通りだけでは、段々、収まりきれなくなってきていて、設置エリアが街の中で拡大中、という流れになっています。

■「星の子チョビン」のチョビン像(橋通り)
■懐かしの「サイクロン号」と「仮面ライダー」
■ロボコンとガンツ先生(萬画館前)
2 「中瀬」という中州にあるマンガ記念館
中瀬(なかぜ、なかせ)というのは、石巻市の中心地、旧北上川河口にある島、つまり中州の名称です。
この場所に立地している、石ノ森萬画館。
この施設は、宮城県出身の漫画家である、石ノ森章太郎の記念館です。
石ノ森章太郎(本名:小野寺章太郎)は、宮城県登米郡石森町(現登米市)出身。
「サイボーグ009」や「仮面ライダー」など、数々のヒット作を生み出し、特撮やアニメーションの世界でも活躍しました。
石ノ森は、中高生時代、自転車で2、3時間かけて、当時「中瀬」にあった映画館へ通っていたそうです。
そんな思い入れから、1995年(平成7年)、当時の石巻市長と対談した際に「マンガによる町おこし」への協力を約束します。翌1996年(平成8年)には、石巻市が「石巻マンガランド基本構想」を策定します。
石ノ森自身は、まもなく1998年(平成10年)に、60歳で亡くなってしまいますが、その後も、市民の署名運動など、機運の高まりが続き、ついに2001年(平成13年)に、萬画館のオープンとなりました。
2011年(平成23年)3月。
東日本大震災津波の際は、川を遡上してきた津波に、萬画館も、一時、飲み込まれてしまいました。しかし、丸いフォルムが幸いしたのか、瓦礫に囲まれながらも、その直撃による、大規模な破壊は免れました。
流されてきた人達、避難してきた人達は、浸水を免れた3階で、在庫の食料と水、そして漫画を読みながら救助を待ったそうです。
その後、再会に向けて、全国からの様々な支援や応援がありました。
萬画館を復興のシンボルとして再開させようという機運の高まりの中、震災発生から1年8か月後に、再オープンを果たしました。
現在も、マンガロードや、萬画館を目当てに、休日には、全国から沢山の人が、訪れています。
人口減少等による、中心市街地の、空洞化のような現象は、石巻市でも同様の悩みだとは思います。
しかし、活性化に向けて取り組もうにも、核になるような、まちの強み自体を見つけかねている、他の多くの自治体からみれば、羨ましい状況であることは、間違いありません。
憂いや、暗い部分もある、石ノ森章太郎ワールドの魅力は、今後も色あせることは無いはず。
まちの活性化の成功事例として、取組が続いていくことを願ってやみません。
■対岸(市街地側)から見る萬画館
■歩いて萬画館へ向かう途中で内海橋から臨む

■石ノ森章太郎がデザインした宇宙船をイメージしたフォルム

■来場者を握手で迎える石ノ森章太郎の右手のブロンズ
