山形県の北西部、日本海に面する酒田市。
長年の課題だった、駅前再開発事業を経て、現在、図書館などを核とした、周辺地区の新たなまちづくりが進められています。
1 酒田駅前の再開発事業
1997年(平成9年)、それまで長年、市民に愛されてきたジャスコ(現在のイオン)酒田駅前店が、閉店となりました。
酒田市は、駅前に生じた、この大規模な空き地の有効活用に、実に20年以上も、頭を悩ませてきました。この間、民間事業者による再開発事業なども計画されましたが、2回も頓挫してしまいました。
2014年(平成26年)に取りまとめられた「酒田駅周辺地区グランドデザイン」に基づき、ようやく事業が進み始めました。翌年度には、整備計画方針を策定。さらに次の年度には事業者を選定し、再開発事業がスタートしました。
順に施設が完成し、2020年(令和2年)にプレオープン。2022年(令和4年)に、遂にグランドオープンとなりました。
「ミライニ」と名付けられた、この一帯を構成しているのは、「酒田市立中央図書館」「酒田駅前観光案内所」「立体駐車場」「広場」そして「バス停留所」の各施設です。
この他に、民間宿泊施設である「月のホテル」の他、レストランや店舗、また庄内バスのターミナルなども(「ミライ二」に併設して)建設されています。
加えて、一角には分譲マンション(ポレスター酒田駅前レジデンス)も、新設されました。

■左奥が図書館、中央奥がホテル、右手前が立体駐車場
■正面下が図書館、右下レストラン、右奥ホテル
■ガラス張りの図書館壁面とミライニ広場
■駅を出て正面の「ミライニ」入り口
■入り口には「MIRAINI」のロゴ
2 民間施設と連動する図書館
「ミライ二」の中核となっているのは、酒田市立中央図書館です。
滞在型の施設が目指されていて、ラウンジや雑誌コーナー、書架内デスクなど、様々なタイプの閲覧席が用意されています。ソファー席なども含めれば、400席以上もあるそうです。
書架などには、酒田産の木材が活用されています。
また、ラウンジに地域の伝統工芸である、庄内刺し子のクッションを置くなどして、雰囲気のある空間作りが進められています。
嬉しいことに、「月のホテル」に泊まった人などは、図書館から本を借りて(貸し出し手続をせずに持ち出して)、滞在している部屋などでゆっくり読んで構わない、というルールになっています。(翌朝、ホテルのカウンターで返却すればOK)
その他、施設内のフレンチレストランでも、図書館とタイアップしたイベントの開催や、料理の提供などを行っています。図書館と民間施設が連携して、様々な取り組みが進められています。
■二階から見下ろす図書館内部
■図書館一階の開放的な空間
■図書館一階からホテルへの通路を臨む
■図書館とホテルの間の説明板
(ホテル等への本の持ち出し自由!)

■ホテルやレストランとの共有空間(右手奥が図書館への入り口)
近年、建設された各地の公共施設の中でも、特に図書館は、そのエリアの賑わい作りに貢献している例が、とても多いように思います。
日中でも、人通りがあまり感じられないような地方の都市で、ふと立ち寄った図書館の中だけは、(高齢者だけではなく)高校生などの若い人達で賑わっていた、ということも、実際、珍しくありません。
現在、日本の公共図書館は「本を借りる場所」というよりも、むしろ「滞在してくつろぐ空間」、いわゆる「サードプレイス」に変わってきているのだと思います。
「ミライニ」も、高校生を中心に、幅広い年代の人達が、思い思いに過ごしていました。
ただし、建設計画が進んでいたとき、首長さんからは、担当者に対し「図書館ぽくないものにしてほしい。例えば、片手にブランデーを持って飲みながら本を読めるようだとよい」といった、希望があったそうです。
確かに、「ミライニ」は、民間施設と連動することで、そのような雰囲気作りにも成功していると思います。特に、図書館から、「月のホテル」のロビーへと続く空間に、そんなメッセージが感じ取れます。
夜、お酒を飲みながら、落ち着いて読書を楽しみたい、というようなことを思いつつも、普段、忙しくてなかなかその時間が取れずにいる人達は、実際に多いと思います。
そんな大人達へ、改めて読書の魅力の訴求が届いて、ゆっくり読書を楽しむ時間を確保するために、「月のホテル」に泊まりに行きたい、と思う人が増えるようになれば(地域活性化の観点からも)益々面白い展開になるだろうと思います。
■図書館側から連続する空間(奥がホテル受付)
■ロビーでも図書の閲覧が可能
■ホテルの部屋からは市内を一望
■宿泊者の記憶に残る眺望(夕暮れの駅と鳥海山)
