山口県長門市では、新生児の出産祝い品に、古い歴史を持つ地元の温泉のお湯を、産湯(うぶゆ)としてプレゼントする取組を始めました。
1 出産祝い品
2025年(令和7年)9月、長門湯本温泉の「恩湯(おんとう)」という施設で、産湯贈呈式が開催されました。
長門市では、新生児誕生のお祝いに送る品目に「恩湯」の入浴液である「クラフト温泉 恩湯」という製品を加えることになりました。これを記念して式典を開催し、来賓や関係者挨拶の後、7月生まれの赤ちゃんへの贈呈も行われました。
「クラフト温泉 恩湯」は、温泉と土壌の温泉成分をブレンドして作られたもので、施設の休憩室やWebでも販売されています。
そもそも「恩湯」とは応永34 年(1427 年)に発見された山口県最古の温泉。赤ちゃんの肌にも優しいアルカリ性単純温泉です。
「恩湯の産湯」は、医学博士の監修のもと、安全性にも配慮されています。
2 長門湯本温泉「恩湯」
長門湯本温泉「恩湯」は約600 年の歴史を持つ「神授の湯」と伝えられる温泉。公衆浴場として、古くから、多くの人々に親しまれてきました。
「恩湯」は、長門湯本温泉の元湯であり、温泉街の中心にある、地域のシンボル的存在。
岩盤から、お湯が湧出している場所の上に浴室が建てられていて、開湯以来600年あまり、掛け流しの源泉がそそいでいます。
現在の施設は、2020 年(令和2年)に、地域の若手を中心としたプロジェクトにより「民設民営」でリニューアルされたもの。現代的なデザインも取り入れつつ、伝統を邪魔しない、シンプルな平屋造りとなっています。

■温泉街と音信川。手前左の施設が「恩湯」
3 各地の子育て支援策
現在、全国各地の自治体では、様々な子育て支援策を実施しています。
メディアのランキングなどで、高い評価を受けているのは、例えば、千葉県松戸市。
松戸市では、「子育てしやすい街づくり」を最重要施策のひとつに掲げて、幅広く取組を進めています。
日経新聞社と日経xwoman(クロスウーマン)が発表する「共働き子育てしやすい街ランキング2024」において、総合編3位を受賞するなど、この数年、常に高い評価を受けています。
駅の近くや駅の中(駅チカ、駅ナカ)に保育施設を確保して、待機児童ゼロを継続するという、ハード的な対応はもとより、各種の助成金などの施策も充実しています。
加えて、松戸市では、子育て世代をターゲットに、支援策の内容や、子育て環境について多くの人に知ってもらうために、Web上の動画などによる、プロモーション活動にも力を入れています。
広報活動の展開などを見ると、松戸市が、この施策に、アイディアもやる気もある、相当に、多くの職員を投入しているであろうことが伝わってきます。
大分県の豊後高田市も、宝島社「田舎暮らしの本」の住みたい田舎ランキングで5年連続総合1位に輝くなど、子育て支援施策で、有名なまちです。
妊娠期から高校卒業まで切れ目のない、経済的なサポート。高額の祝い金。
とにかく手厚い施策となっています。
佐々木敏夫市長は、ホームページの挨拶で「0歳児から高校生までの保育料・授業料・給食費・医療費の完全無料化を実現することができた」と、説明しています。
市外から移住者を呼び込む施策として位置付けたものである、という狙いについても、率直に述べられています。
このような取り組みの結果、豊後高田市では、人口動態において、11年連続で、転入者が転出者を上回る、いわゆる「人口の社会増」を達成(令和7年4月現在)しているそうです。
多くの自治体がうらやむ、確かな成果につながっていると思います。
人口減少の克服に向けた、子育て支援策について、目に見える成果につなげるためには、相当の財源や、人材の投入が必要になっているというのが、現在の自治体施策のトレンドのようです。
