青森県の南東部、三戸町(さんのへまち)。
絵本「11ぴきのねこ」シリーズの作者、馬場のぼるの出身地です。
三戸町では「11ぴきのねこ」を活かしたまちづくりを進めています。
1 11ぴきのねこ
「11ぴきのねこ」は、漫画家であり、絵本作家である馬場のぼるが制作した、絵本のシリーズです。
絵本は、全部で6冊刊行され、シリーズ合計で480万部を超えるロングセラーとなっています。
リーダーの「とらねこたいしょう」と、10匹のねこたちのお話し。
「とらねこたいしょう」以外は、同じデザインの10匹のねこ。リーダーの指示のもと、わいわいがやがや活躍します。
魅力の一つは、可愛さだけではない、ねこ特有の「ちゃっかり」とした雰囲気ではないかと思います。食べ物を求めて、団結もしますが、一匹、一匹が、少しずるいことも考えています。
そのまま「11ぴきのねこ」というタイトルの、第1作目。
お腹をすかせた11ぴきのねこたちが、力を合わせて巨大な怪魚を捕まえるお話しです。
戻ってから、みんなで食べようと、リーダーがいったのに・・・
第2作目は、「11ぴきのねことあほうどり」。
コロッケ店を開業した11ぴきのネコたち。店は大繁盛。閉店後、毎晩売れ残ったコロッケを食べていました。段々、飽きて「おいしい鳥の丸焼きが食べたい」と、なげくようになります。
その時、旅の途中だった一羽のアホウドリがやってきて・・・
シリーズ全体に、可愛い絵と意外なストーリー展開が特徴です。
子どもだけでなく、大人も楽しめるお話し。
そのストーリー作りは、漫画家として活躍した後、絵本の世界へと進んだ、馬場のぼるならではの、読者に対するサービス精神からくるのではないか、と感じます。
ほのぼのとしていながらも、何か「いたずら」を考えていそうな、ねこたちの笑顔。
一つ一つのデザインが、時代を超えていくパワーを持っていると感じます。
三戸町では、町の複合施設前に設置した「とらねこたいしょう」を皮切りに、町の要所に、11ぴきのねこたちの「石像」を配置して、訪れた人達が街歩きを楽しめるような取組を進めています。
2 町にとけ込む猫の石像
三戸町では、2013年(平成25年)に、まず、リーダー「とらねこたいしょう」の石像を設置しました。
選んだ場所は、馬場のぼるが生まれた土地でもある、元木平(もときたいら)地区にある、複合施設「アップルドーム」の正面入り口前。
絵本のシリーズ4作目「11ぴきのねこ ふくろのなか」から取ったデザインです。
■リーダー「とらねこたいしょう」
■毎日笑顔で手を振っています。
国道4号線沿いにある、道の駅「さんのへ」。
正面の入り口横に、たい焼きを食べる、ねこの石像があります。
こちらは2018年(平成30年)に、設置。
馬場のぼるのイラストから制作されたもので、「たいやきねこ」と呼ばれています。
■たいやきねこ
■思わず撫でたくなるような石の質感
市内の三戸中央病院の、駐車場の一角に立っているのは「とんぼねこ」。
こちらも、馬場のぼるのイラストから制作したものです。
現在は、病院になっているこの一体は、かつてはリンゴ畑が広がる場所だったそうです。
■とんぼねこ
■病院の駐車場の一角に設置
三戸町では「おさんぽマップ」を作って、訪れた人に配布しています。
2020年(令和2年)に10番目(郵便局員ねこ)と、11番目(遠足ねこ)の石像が加わり、11匹の石像がそろいました。
その後も、2023年(令和5年)に、絵本シリーズ第1作目に登場する「おおきなさかな」、2024年(令和6年)に、絵本シリーズ第2作目に登場する「あほうどり」の石像が加わりました。

■おさんぽマップ
「とんぼねこ」の目線の先には、馬場のぼるも眺めていたであろう、名久井岳一体の景色が広がっています。
現在、世の中は、ちょっとした「ねこブーム」。
ねこたちの気ままさに、疲れた現代人の心が癒やされるからかもしれません。
11ぴきのねこたちにも、そんな安らぐ雰囲気があります。
「とんぼねこ」と一緒に、いつまでも名久井岳を、ぼんやり眺めていたいような気分にもなります。
多くの観光客が押し寄せて、目に見えた経済効果を生むような、そんなコンテンツではないのかもしれません。
しかし、「11ぴきのねこ」を核としたまちづくりは、一時的な「はやりすたり」では無く、息長く、続いていく取組になるだろうな、と感じたところです。

■名久井岳を望む。リュックと尻尾が可愛い